沖縄好きなフィジオライオンは、熱くなると燃えてきます。
冒頭の写真は『ばんない堂さん』の沖縄のフリー素材のサイトからのものです。
見るだけで癒されますね。
今後も使わせて頂きたいと思います。
今回の投稿のテーマはPICO(ピコ)/PECO(ペコ)です。
当ページのKey Questionは、
- PICO/PECOとは何か?
- PICO/PECOが使用できると何に役立つか?
はじめに
研究を行ったことがある方なら、
一度はPICO/PECOという言葉を聞いたことがあるかもしれません。
人によってはそんなの常識だよって方もいると思います。
一方で、研究を行ったことがない人にとっては初めて聞くワードかもしれません。
私は研究を行った経験がありますが、
当初は恥ずかしいことに
「へぇ~そんなのあるんだー。で、何に役立つの?」
と思っており、
今まであまりPICO/PECOの重要性には気が付いていませんでした。
研究を実践して実際に色々と失敗すると、
最初の研究計画が非常に重要であることを痛感します。
もし皆さんの中で、
研究を実践していると、
・だんだん当初の目的から進む方向が変わってしまう...
・迷走してしまう...
という方がいらっしゃったら一読する価値があるかもしれません。
その他に、
PICO/PECOが理解できると、臨床や研究で様々なメリットがあるので
皆さんに紹介したいと思います。
皆さんもPICO/PECOを知ることで研究や臨床に役立つ視点が手に入ると思います。
PICO/PECOとは
一言で言えば、PICO/PECOは『臨床疑問・問題の定式化』のためのツールです。
皆さんは、臨床業務を行っていて、
「これは何でだろう?」
と思うことはよくあると思います。
それが、臨床疑問・問題です。
それを定式化するためのツールがPICO/PECOになります。
PICO/PECOによって臨床疑問・問題を定式化ができれば、その研究の方向性あるいは目的が明確にできます。
PICO/PECOは以下の英語の頭文字をとったものです。
P: Patient(患者)・Participants(参加者)
I: Intervention(介入)、E: Exposure(暴露・要因)
C: Comparison(比較)
O: Outcome(アウトカム・結果)
そして、臨床疑問・問題が
治療法・予防法の評価に関するものであれば『PICO』を使用し、
暴露・要因の同定・検証に関するものであれば『PECO』を使用します。
PICO/PECOの一般的な活用方法としては、
研究テーマが決まったり、調べてみたいことや明らかにしたいことが定まってきたら、まずPECO、PICO〔以下あわせてPE(I)CO〕とよばれる、研究に関する問題点・疑問点(リサーチクエッション)を抽出し定式化する方法を用いて整理するとよいでしょう。引用: 山田 実(編集),土井剛彦(著者),浅井 剛(著者):PT・OTのための臨床研究はじめの一歩 研究デザインから統計解析、ポスター・口述発表のコツまで実体験から教えます.羊土社.2016;p45-48.
とあるように、出発点は臨床疑問・問題であり、
それを整理するためにPICO/PECOを活用していきます。
以下に
臨床疑問・問題:『脳卒中患者に対する漸増性筋力増強トレーニングは、歩行機能を改善させるのか?』
に対してPICOを用いて定式化の一例を示したいと思います。
P: 急性期脳卒中患者
「どんな対象に?」
対象を選ぶ上で重要なのは、
・選択対象がアウトカムを起こしやすいかどうか?
・実施可能な対象か?
を検討する必要があります。
フィジオライオンは急性期病院に勤めてるので、急性期の脳卒中患者に興味があります。
また、実行可能性といって、現実問題として臨床の傍ら研究を行うことができることを踏まえると
急性期脳卒中患者を対象とすることが妥当だと考えました。
I: 漸増性筋力増強トレーニング
「何によって、何をすると?」
臨床疑問・問題として漸増性筋力トレーニングの運動療法に焦点を当てています。
つまり、ここは研究者が一番興味を持っている点といえます。
漸増性筋力トレーニングといっても幅広いので、
実際の研究では先行研究を参考に具体的な介入方法の検討が必要となります。
C: 通常理学療法
「何と比べて?」
介入効果や要因の影響を検討するには
適切な対照群を設定することが必須となります。
ここでの対照群は、”介入なし”あるいは”他の運動療法”が考えられます。
他の運動療法との効果の差を検討したければ、同じ量の介入が必要となってきます。
また、対照群を設定する上で、倫理的な問題もクリアする必要が出てきます。
O: functional ambulation category (FAC)
「どうなるか?」
アウトカムは効果判定をするための指標で、研究にとっての主役的な存在です。
アウトカムの設定では、知りたい効果を測定可能かどうか重要となります。
今回は歩行が改善するかどうかを明らかにしたいと考えています。
歩行の改善を評価するにもたくさんの評価方法があるため、
どれを選択するかは吟味が必要です。
上記は一例で、研究デザインや焦点の違いでPICO/PECOは無数に存在します。
明らかになるとワクワクするような臨床疑問・問題を定式化してみましょう。
PICO/PECOを使用する利点とは
多くの医学・医療分野の論文は高度に構造化されています。
Impact factor(ある雑誌が1年間で引用される回数の平均値を表す指標)が高い雑誌の論文ほど
構造化はしっかりしたものとなっている印象です。
つまり、科学的に引用する価値が高い論文ほど、PICO/PECOに落とし込めるということです。
逆にPICO/PECOに落とし込めない論文は、一貫性に欠けているとも言えるかもしれません。
もっとわかり易く言えば、
PICO/PECOに落とし込めない論文は、
結局のところ、何を問題点をして、何を明らかにしたかったのかわからない!!
となってしまいます。
フィジオライオン的にPICO/PECOを理解していると
以下の3つのメリットがあると思います。
❶臨床で生じた疑問を研究案の候補に落とし込める
日々の臨床では、
「あれ?この疾患の人の機能的予後ってどうなんだろう?」
「Aという治療が反応する人としない人の違いは何だろう?」
「Aという要素をもっている人って機能的な予後がいいかも?」
など、疑問は尽きないと思います。
その臨床疑問、Clinical Questionを
頭の中だけにしまっておいて何も加工しないと、
仮によい着眼点だとしても直ぐに忘れてしまいます。
そこで、PICO/PECOに落とし込んで疑問を文字にして見える化する作業が重要となります。
PICO/PECOとして形になれば、研究案の1つとなりますし、
形にならなければ、何かの要素が足りないことを意味します。
「研究はしたいけいど、何をやればいいか分かりません。」
とよく耳にしますが、そんな方は是非とも
臨床で出た疑問をPICO/PECOに落とし込んでみてください。
臨床疑問から研究案ができれば、
次の作業として、先行研究に当たることになります。
その過程でPICO/PECOが洗練され、確固たるものになれば、
本当に価値ある研究になるかもしれませんし、
はたまた、既に先人がその疑問に対して答えの1つを提示してくれているかもしれません。
❷自分の研究テーマが明確になる
例えば、
「あなたは今何の研究テーマは?」
という問いに対して
『脳卒中の歩行についてです。』
という返答も正解ですが、
研究の関心ある場所や分野を示しただけに過ぎず、
何を対象として、
何に焦点(どんな問題点・疑問点に注目)を当てて、
何を明らかにしたか
を明確にしないと相手には伝わらないと思います。
一方でPICO/PECOを意識して、
『回復期脳卒中患者に対して、中殿筋への電気刺激療法の有無が退院時の歩行パラメータにどのように影響するかを明らかにすることです。』
と返答できた方が研究テーマがより明解に伝わると思います。
曖昧さを排除して自分の研究テーマを伝えれれると、
研究の目的が明確となり、研究がぶれなくなります。
この点は非常に重要で、
どうしても研究過程が進んでくると、
自分がそもそもこの研究で何を明らかにしたかったのかを見失いがちです。
PICO/PECOを使って研究の構造が明確になれば、
研究デザイン、統計手法が概ね決まってきます。
PICO/PECOはシンプルですが、研究を行う上でとても大切なことが分かりますね。
❸論文内容を把握することに役立つ
皆さんは臨床で分からない事や疑問が生じた場合、
その解決策の1つとして、文献を検索して読むと思います。
前述した通り、質の高い論文ほど、PICO/PECOが論文の骨格となっています。
そういったつもりで論文を読むと理解が深まります。
論文を読みながらPICO/PECOを意識すると、
その論文がどんな対象に対して何を明らかにしたいかが明確になり、
論文を体系的に把握することができます。
つまりPICO/PECOを意識すると、
その論文が自分の知りたい情報にアクセスできるかどうかの判別につながりますし、
構造を理解して論文を読むので、
結果的に理解は深めた上で、論文を読むのにかかる時間を短縮できます。
まとめ
フィジオライオン的まとめは、
- PICO/PECOは研究の骨格であり、臨床疑問・問題の定式化のためのツールである。
- ❶臨床で生じた疑問を研究案の候補に落とし込める
❷自分の研究テーマが明確になる
❸論文内容を把握することに役立つ
フィジオライオンは研究を行うと直ぐに
脇道に反れてしまい、迷走状態に入ってしまいます。
そんな私にとってPICO/PECOは羅針盤的なものだと考えています。
PICO/PECOを上手く活用して、
少しでも質の高い研究や臨床ができたら嬉しいです。
このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。
昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。