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脳卒中患者において自立した起立動作を獲得するためのポイントは?

2021/10/08

運動療法 起立動作 脳卒中 論文紹介

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皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

脳卒中患者にとって起立動作の獲得は日常生活動作の自立や介助量軽減にとって欠かせない項目です。

理学療法士としては当たり前の内容かもしれませんが、

現状のエビデンスを見ながら確認していきたいと思います。

当ページのKey Questionは、

  1. 脳卒中患者において自立した起立動作を獲得するためのポイントは?

普段の訓練で起立動作を行っている方は参考になるかもしれません。
お付き合い頂けたら幸い。
 

起立動作を獲得するためのエビデンスは不充分

現状のエビデンスとして脳卒中患者が自立した起立動作を獲得するためのエビデンスはあるのでしょうか?

This review has found insufficient evidence relating to our primary outcome of ability to sit-to-stand independently to reach any generalisable conclusions. 
引用: Interventions for improving sit-to-stand ability following stroke. Pollock A, Gray C, Culham E, Durward BR, Langhorne P. Cochrane Database Syst Rev. 2014 May 26;2014(5):CD007232.

とあるように、

  自立した起立動作能力獲得に関する十分なエビデンスが得られなかったとあります。

つまり、起立動作が自立していない脳卒中患者に対して

起立動作練習の有効性は検討の必要があるということです。


紹介された論文は2014年出版で、選択された論文は2013年6月までのものとなっているので、
Updateされるのが待ち遠しいですね。

※参考までに上記の論文では、
すでに立ち上がり動作が自立している者に関しては、所用時間の短縮左右非対称性の改善が見られるとの中程度のエビデンスが見られたとあります。


自立した起立動作を獲得した患者の特性とは?

臨床で働く身としては、どういった起立動作特性を持つ脳卒中患者が自立した起立動作を獲得するかが気になります。

その特性が理解できれば、理学療法士としてどこに着目して運動療法を実施していけばよいか参考になります。

次に紹介する論文は、
脳卒中後平均35日の患者を対象として、6週間の運動療法を実施して、自立した起立動作を獲得した者の特性を分析しているものです。

ーBaseline時点において、大腿四頭筋活動のピーク時におけるCoMの位置(麻痺側)は、統計的に異なり(P = 0.038)、リハビリテーション後に起立動作の自立性を回復した群(128.87 ± 73.55 mm)よりも、自立しなかった群(68.86 ± 82.70 mm)の方がはるかに後方にあった。
ーリハビリテーション後に起立動作の自立性を回復した群は体の前方移動を増やし、両側の大腿四頭筋のピークの時間差、および非麻痺側の大腿四頭筋とハムストリングスの時間差を減少させた。
引用:Neuromechanical Differences Between Successful and Failed Sit-to-Stand Movements and Response to Rehabilitation Early After Stroke. Kerr A, Clark A, Pomeroy VM. Neurorehabil Neural Repair. 2019 May;33(5):395-403.

論文の結論としては、

リハビリ後に自立した起立動作を獲得した者は、そうでない者と比較して

リハビリ介入前時点での起立動作時の重心が有意に前方にあったことを示してします。

さらに、リハビリ後に自立した起立動作を獲得した者は介入後もさらに重心は前方に移動していることも分かりました。

Kerr Aらは、座った状態で20cmの前方変位(垂直に対して約25°から30°の体幹の前傾)が妥当な治療目標となる可能性を示しています。


また、リハビリテーションのもう一つの重要な目標として、体幹前傾とそれに同期した大腿四頭筋およびハムストリングスの筋活動を獲得することとしています。

これに関してはバイオフィードバック等で筋収縮のタイミングにアプローチしてもいいかもしれません。


まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 重心の前方移動へのアプローチ
  2. 体幹前傾とそれに同期した大腿四頭筋およびハムストリングスの筋活動へのアプローチ

いかがでしょうか。
既に普段から当たり前のように意識されていた方がほとんどでしょうか?

フィジオライオン的には、
起立動作練習が自立した起立動作獲得につながるというエビデンスに関して、
現状では不十分であることに驚きました。
この点は、更なる臨床での探究が必要かもしれませんね。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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このブログを書いている人

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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