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脳卒中患者の歩行の機能的予後予測で評価すべき項目とは?

2021/10/31

脳卒中 歩行 予後予測 理学療法評価 理学療法用語 論文紹介

t f B! P L

皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

理学療法士にとって歩行は主要な治療対象であると思います。

では、今担当している患者さんが家に帰った時に
どの程度の活動レベルが得られるかは把握しておきたい情報であると思います。

当ページのKey Questionは、

  1. 退院後の歩行機能レベルを区別するためにはどんな評価が必要か?

歩行機能の改善させようと治療を行っている皆さんには一読する価値があると思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。


目標設定には機能的予後予測が必要

脳卒中患者の理学療法を行う上で、短期・長期目標を設定すると思います。

特に回復期病院で働いている方なら、
「このくらいの機能があるから、Aさんは屋内歩行自立は可能であると考えます。」
「このくらいの機能があるから、Bさんは屋外歩行は制限あるけいど可能であると考えます。」
と医師や患者さんにお伝えする機会があると思います。

ただ、フィジオライオンは、
歩行の予後予測判定が経験ベースのみで、ものすごく曖昧なものでした

臨床経験や先輩の予後の見立ては非常に価値あるものではありますが、
やはり、根拠づけは必要な作業であると思い、このページの作成を試みることになりました。

脳卒中患者の歩行の機能的予後予測の論文

脳卒中の予後予測の論文は、検索するとたくさんヒットします。
そんな中、私が今日皆さんに紹介するのは、
「Predicting Home and Community Walking Activity Poststroke」
という論文です。
タイトルを見るだけでフィジオライオンは興奮してしまいます。

この論文の肝は、
今まで専門家の意見による機能的歩行分類を快適歩行速度を用いて予測していたものを、
活動量計を用いた実際の歩行活動データによる機能的歩行分類を快適歩行速度を含む”最適な評価”から予測するという試みにあります。

ややこしいので具体的に説明します。

1995年にPerryらは、歩行速度の違いによって歩行障害を区別できることを実証した独創的な研究を発表しました

理学療法業界では有名な分類ではあると思いますが、
快適歩行速度を用いて歩行の機能レベルを以下のように分類しています。

屋内レベル(home ambulator)
<0.40 m / s;外出は困難

制限付き屋外レベル(limited community ambulator)
0.40–0.80 m / s;屋外歩行は可能であるが、近所のお店などに制限

屋外レベル(unlimited community ambulator)
> 0.80 m / s

皆さんもどこかで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
広く使用されており、これらの値は、脳卒中後の人々を分類するのに役立ちます。

しかしながら、
快適歩行速度は屋内や屋外での実際の歩行パフォーマンスを反映していない可能性があります


今回、紹介する論文では、歩行の機能レべルを快適歩行速度で区別するのではなく、
以下に示すように
活動量計(歩数計)の値を用いて、実際の住民の毎日の歩行活動に基づいて分類しています。

屋内レベル(home ambulator)
100〜2499歩/日

かなりの制限付き屋外レベル(most limited community ambulator)
2500〜4999歩/日

最小限の制限付き屋外レベル(least limited community ambulator)
5000〜7499歩/日

屋外レベル(unlimited community ambulator)
7500歩/日以上

快適歩行速度ではなく、一日に歩数で分類することで、
屋内や屋外での脳卒中の人々の歩行活動を正確に測定できる点が強みと言えます。


と、非常に前置きが長くなりましたが、
論文の目的は、
活動モニターを使用して、実際の歩行活動データから決定される歩行活動を予測する要因を再検討することとなっています。

以下、論文結果の引用です。
The 6-minute walk test, Fugl Meyer, and Berg Balance Scale combined were the strongest predictors of home versus community and limited versus unlimited community ambulators. 
引用:Predicting Home and Community Walking Activity Poststroke. Fulk GD, He Y, Boyne P, Dunning K. Stroke. 2017 Feb;48(2):406-411.

論文の結論は、 

”屋内歩行レベルと屋外歩行レベル”および”制限付き屋外歩行レベルと屋外歩行レベル”を区別する予測する因子として、
6分間歩行テスト(6MWT)、Fugl-Meyer Assessment-下肢(FMA-下肢)、Berg Balance Scale(BBS)の組み合わせが選択されました。

より詳細情報として

”屋内歩行レベルと屋外歩行レベル”の区別を最も良く予測するために、
6MWT;205m以上、FMA-下肢;27点以上、BBS;48点以上
の値が示されました。

また、
”制限付き屋外歩行レベルと屋外歩行レベル”の区別を最も良く予測するために、
6MWT;288m以上、FMA-下肢;27.6点以上
の値が示されました。


まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 機能的歩行レベルを予測するためには6分間歩行テスト、Fugl-Meyer Assessment-下肢、Berg Balance Scaleの評価を行う必要がある。

上記の様にまとめましたが、
一つでも評価することで、歩行の予後予測に役立つと思います。

特に、紹介した論文では、
快適歩行速度よりも6分間歩行テストの方が、より地域での歩行に反映している可能性を示唆しています。

実際の臨床においても、
地域で歩行するにはある程度の歩行耐久性が必要であることは実感します。

そのため、
6分間歩行テストでの歩行耐久性を評価することは重要な視点であると考えられます。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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このブログを書いている人

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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