現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。
病院で働いていて、担当患者さんが病棟で転倒するとショックですよね。
なるべく事前に対策が打てればと思うものです。
当ページのKey Questionは、
- Stroke Unitに入院中の脳卒中患者の転倒リスク因子は?
転倒予防について考えたことがある方にとっては参考にあると思います。
ということで1論文を紹介したいと思います。
脳卒中患者の転倒予防の必要性
フィジオライオンは急性期病院に勤めていますが、
Stroke Unit (Stroke Care Unitと同義)でリハビリテーションを行うことも多いです。
脳卒中患者は転倒リスクが高いことは言わずもがなだと思います。
先行研究では、入院中の急性期脳卒中患者の転倒率は14-22%とも報告されています。
転倒しても怪我しなければ不幸中の幸いですが、
傷害を受けると患者にとってはマイナスでしかありません。
フィジオライオン的に
臨床現場で転倒リスクを予測する必要性がでる場面は大きく3つあると考えています(他にもあると思いますが、、、)。
❶入院患者において事前に転倒リスクの層別化を行うために、入院時に対象者の特性や障害よる転倒予測が欲しい
❷病棟の安静度を上げられるかを判断するために、現状の対象者の特性や障害による転倒予測が欲しい(これはカットオフ値などが必要?)
❸病院退院後の転倒の可能性を判断するために、際に退院時の特性や障害による転倒予測が欲しい
今回紹介する論文は、
❶の転倒リスクの層別化に使用できるのではないかと考えています。
Risk of failing in a stroke unit after acute stroke: The Fall Study of Gothenburg (FallsGOT)
紹介する論文はスウェーデンで行われた研究です。
対象は、急性期脳卒中患者504名が解析対象となっています。
全対象者の特性は以下の通りです。
年齢の中央値が77歳(67-84.8)、
NIHSSの中央値が2(0-4)、
入院日数の平均値が11日(SD10.8)、
入院後の理学療法士による評価日の中央値が1日(IQR:1-2日)
なお、病院の機能的役割として、血栓溶解療法や血栓除去術を受けた患者は研究に含まれていません。
上記の情報は、自身の病院にも適用できるかの参考になるので詳細に記載してあります。
また、評価項目は以下の通りです。
・年齢
・性別
・バランス低下を経験してますか?(Yes/No)
・転倒への恐怖感はありますか?(Yes/No)
・SwePASS※
・BBSのタンデム保持
・BBSのタンデム保持の患者が危険行動を示すかどうかセラピストの主観的な判定
・SGPALSによる発症前の活動量
・MoCA
・起立性低血圧の有無
・NIHSS
・在院日数
・虚血性脳卒中の病型
・服用された薬剤の数
※SwePASSは、12項目からなる順序式の臨床結果測定法で、各項目は0~3で評価される。スコアが高いほど姿勢制御が良好であることを示す。SwePASSは、脳卒中後1年間の転倒の中等度な予測因子であることが示されている(カットオフポイントは≦32)。
SwePASSの評価内容の詳細はこちらをご参照ください。
Factors statistically significantly associated with falling in the multivariable analysis were male sex (hazard ratio (HR): 1.88, 95% confidence interval (Cl): 1.13-3.14, P=0.015), use of a walking aid (HR: 2.11, 95% Cl: 1.24-3.60, P=0.006) and postural control as assessed with the modified version of the Postural Assessment Scale for Stroke Patients (SwePASS). No association was found with age, cognition or stroke severity, the HR for low SwePASS scores (≦24) was 9.33 (95% Cl: 2.19-39.78, P=0.003) and for medium SwePASS scores (25-30) was 6.34 (95% Cl: 1.46-27.51, P=0.014), compared with high SwePASS scores (≧31).引用:Risk of falling in a stroke unit after acute stroke: The Fall Study of Gothenburg (FallsGOT). Persson CU, Kjellberg S, Lernfelt B, Westerlind E, Cruce M, Hansson PO. Clin Rehabil (IF: 3.48; Q1). 2018 Mar;32(3):398-409.
論文の結果は、
多変量Cox比例ハザードモデルでは、転倒リスクと統計的に有意な関係を保っていたのは、「SwePASS」「男性」「歩行補助具の使用」の3因子のみであり、年齢、認知機能、脳卒中の重症度との関連は認められず、
SwePASSスコアが高い(≧31)場合と比較して、SwePASSスコアが低い(≦24)場合のHRは、9.33(95%CI:2.19-39.78、P=0.003)、SwePASSスコアが中程度(25-30)の場合は6.34(95%CI:1.46-27.51、P=0.014)であったとうものでした。
SwePASSは姿勢制御能力をみるもので、
点数が高いほど能力が高いことを示しており、
今回の結果として点数が低いほど転倒リスクが高いということは
臨床的にも納得がいきますね。
また、歩行補助具の使用に関しても、
そもそもがバランスが悪い方が使う物なので転倒との関連はありそうです。
最後に男性が予測因子にあがりましたが、
これに関しては考察でも述べられていましたが、
はっきりとした理由はよくわからないです。
まとめ
フィジオライオン的まとめは、
- Stroke Unitに入院中の患者において、「姿勢制御障害」、「歩行補助具の使用」、「男性」が転倒の予測因子となる可能性がある
転倒の予測因子の研究は数多くあり、
研究によって要因が変わるような印象があります。
その中で共通する要因を注視して患者に応用することが大切だと思います。
本来なら、自分自身の勤める病院で転倒予測因子の研究を行うのが一番ですが、
自分の病院の対象者や環境に合った研究を探して参考にするのが手っ取り早いのかもしれませんね。
このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。
昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。