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虚弱高齢者において『話すと歩くのをやめる』は転倒予測因子である

2021/11/18

転倒 理学療法評価 論文紹介

t f B! P L


皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

理学療法士であれば歩行練習をすることは多いと思います。

その際、体調のチェックや問診を兼ねて話しかけることがあると思いますが、

患者さんが歩くのをやめることを経験したことはあるでしょうか?

当ページのKey Questionは、

  1. 歩行練習中に話しかけると患者が歩くのをやめることから考えれることとは?

話しかけて患者が歩くのをやめることを経験したことがある方は
一読する価値があるかもしれません。

Lancetで紹介された転倒予測評価

どのような患者が転倒の危険性があるのかを判別することは、
転倒予防対策をとる上で重要です。

そのためには、妥当性があり信頼性が高く、実施が容易な臨床尺度が必要となります。

転倒を予測する評価尺度はたくさんありますが、評価が簡便であるほど助かります。

今回の紹介する研究は、
少し古くはなりますが、1997年にLancetに報告された論文になります。

CASE REPORTではありますが、
シンプルな方法でLancetに掲載されている驚きと、
その評価の有用性をお伝えできればと思います。

"Stops walking when talking" as a predictor of falls in elderly people

見出しにあるように高齢者に対して、
"Stops walking when talking"つまり、"話すと歩くのをやめる"ことが転倒の予測因子である
とあります。

驚きですよね。
そんなシンプルな評価で転倒を予測できるの?
と疑ってしまいます。

フィジオライオンも臨床で働いていて、そのような患者さんをよく経験します。 

今回紹介するケースレポートの対象者は、
施設入所中の高齢者58名であり、
介助の有無にかかわらず歩くことができ
簡単な指示に従うことができる者でした。

平均年齢[SD] は80.1 [6.1]歳であり、
診断としては認知症、うつ病、脳卒中の既往を有している者が多く、
Mini-Mental State Examinationのスコアの中央値(四分位範囲)は21.5(18–26)、
Barthel IndexによるADLスコアは17(14–19)でした。

評価の方法は非常にシンプルで、
施設から評価室に同行している間、理学療法士によって観察され、会話が始まったときに歩行をやめるかどうかが記録されました。

そして、6ヶ月間のフォローアップ中に室内での転倒を記録しました。

Kaplan-Meier distributions of falls differed significantly between those who stopped walking and those who continued to walk (figure, log-rank test 17.46, p≦0·001). The positive predictive value of “stops walking when talking” was 83% (10/12) and the negative predictive value was 76% (35/46). The specificity was high (95%; 35/37) but the sensitivity was low (48%; 10/21). 
引用:"Stops walking when talking" as a predictor of falls in elderly people. Lundin-Olsson L, Nyberg L, Gustafson Y. Lancet. 1997 Mar 1;349(9052):617.

論文の結果は、

 転倒のKaplan-Meier分布は、歩くのをやめた者と歩き続けた者で有意に異なっており、

”話すと歩くのをやめる”の陽性的中率は83%、陰性的中率は76%、特異性は95%、感度は48%であったと報告しています。


少し用語を説明すると

陽性的中率とは、
検査結果が陽性判定が出た者のうち、真に問題を有している者の割合のことで、
具体的には“話すと歩くのをやめる”という陽性判定が出た者のうち、6か月間で転んだ者の割合のことです。

逆に陰性的中率とは、
検査結果が陰性判定が出た者のうち、真に問題を有していない者の割合のことで、
具体的には“話しても歩き続ける”という陰性判定が出た者のうち、6か月間で転ばなかった者の割合のことです。

臨床現場ではわかり易い指標ですね。

また、感度と特異度に関しては以前の投稿で説明しているので以下を参照ください。

なお、感度および特異度から
陽性尤度比は9.6、陰性尤度比は0.54と算出できます。

感度が低いことを鑑みると、“話すと歩きをやめる”というシンプルな評価は、
フィジオライオン的には虚弱高齢者などの転倒が疑わしい方を対象に用いるのが特に有効ではないかと考えます。

まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 転倒が疑わしい虚弱高齢者に話しかけて歩くのをやめる場合、転倒リスクが高いと考えられる

これだけシンプルな方法で有益な結果を出せる驚きは伝わったでしょうか。
これなら自分もLancet投稿できるのではないかと勘違いしてしまいそうです(笑)。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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