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急性期脳卒中患者における長期的な転倒再発の予測因子とは?

2021/11/18

転倒 脳卒中 理学療法評価 論文紹介

t f B! P L


皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

転倒に関しては予防できるのが一番ですよね。

ただ、転倒を繰り返してしまう患者も多く存在します。


当ページのKey Questionは、

  1. Stroke Unit入院時から脳卒中発症後12ヵ月までの転倒再発の予測因子とは?
  2. Stroke Unit退院後から脳卒中発症後6ヵ月までの転倒再発の予測因子とは?

転倒を繰り返ししまう人の特徴としてどのような要因があるかの参考になれば幸いです。


FallsGOT Studyの続編

前回、Stroke Unitに入院中の転倒の予測因子について話しました。

まだ見てない方は以下をご参照ください。


今回も「FallsGOT」の続編となります。
前回はStroke Unit入院中の転倒の話でしたが、

今回は、
”Stroke Unit入院時から脳卒中発症後12ヵ月まで”
“Stroke Unit退院後から脳卒中発症後6ヵ月まで”
それぞれの期間における転倒再発(転倒を繰り返し起こす)に関連する要因を調査したものとなります。

転倒を繰り返す脳卒中患者の特徴とは?

紹介する研究は、前向き観察研究であるFallsGOTの一部であり、
Samuelssonらによる報告の続編です。

そのため、
対象者および評価項目はほぼ同一で、
研究期間中に死亡した者およびFollow up調査できなかった者を除いて解析されています

転倒再発者および非転倒者の基本属性は以下の通りです。
転倒再発者:
年齢の中央値が80歳(71-86)、
NIHSSの中央値が2(1-4)、

非転倒者:
年齢の中央値が76歳(67-83)、
NIHSSの中央値が1(0-3)

評価項目は以下の通りです。
・年齢
・性別
・バランス低下を経験してますか?(Yes/No)
・転倒への恐怖感はありますか?(Yes/No)
・SwePASS
・BBSのタンデム保持
・BBSのタンデム保持の患者が危険行動を示すかどうかセラピストの主観的な判定
・SGPALSによる発症前の活動量
・MoCA
・起立性低血圧の有無
・NIHSS
・在院日数
・虚血性脳卒中の病型
・服用された薬剤の数

※SwePASSの評価内容の詳細はこちらをご参照ください。


上記の評価項目に加えて
Stroke Unit退院後から脳卒中発症後6ヵ月までの転倒再発の予測因子として、
Stroke Unit滞在時の転倒の有無が加わっています。


まず、Stroke Unit入院時から脳卒中発症後12ヵ月までの転倒再発の予測因子に関する解析結果は、
In the multivariable analysis, impaired postural control (as assessed by the SwePASS) and use of a walking aid remained statistically significantly associated with the risk of falling. The odds ratio for the risk of falling for the participants with poor postural control (SwePASS total score ≦24) in the acute phase poststroke was nearly 6 times higher in comparison to the participants with good postural control (SwePASS total score of ≧31).
引用:Determinants of Recurrent Falls Poststroke: A 1-Year Follow-up of the Fall Study of Gothenburg. Samuelsson CM, Hansson PO, Persson CU. Arch Phys Med Rehabil. 2020 Sep;101(9):1541-1548.

論文の結果は、

多変量解析では、姿勢制御障害(SwePASSで評価)と歩行補助具の使用が引き続き転倒リスクと統計的に有意に関連しており、脳卒中の急性期に不良な姿勢制御(SwePASS ≦24)であった対象者の転倒リスクのオッズ比は、良好な姿勢制御(SwePASS ≧31)であった対象者と比較して約6倍でした。

また、中程度の姿勢制御(SwePASS 25~30)の人では、転倒リスクのオッズ比が約2.5倍になり、脳卒中後の急性期に歩行補助具を使用している人では、転倒リスクのオッズ比が2.5倍という結果でした。


次に、Stroke Unit退院後から脳卒中発症後6ヵ月までの転倒再発の予測因子関する解析結果は、

In the multivariable analysis, use of a walking aid (OR 1.87; 95% CI, 1.01-3.47; P=.048), fall at the stroke unit (OR 2.48; 95% CI, 1.16-5.31; P=.019), and postural control, as assessed by the SwePASS, remained statistically significantly associated with the risk of falling repeatedly. For the participants with poor postural control (SwePASS total score ≦24), the OR was 3.06 (95% CI, 1.30-7.17; PZ.010) and for the participants with moderate postural control (SwePASS total score 25-30), the OR was 2.62 (95% CI, 1.18-5.81; P=.018) for the risk of recurrent falls in comparison to the participants with a SwePASS total score of ≧31.
引用:Determinants of Recurrent Falls Poststroke: A 1-Year Follow-up of the Fall Study of Gothenburg. Samuelsson CM, Hansson PO, Persson CU. Arch Phys Med Rehabil. 2020 Sep;101(9):1541-1548.

論文の結果は、

多変量解析では,歩行補助具の使用(OR 1.87,95%CI,1.01-3.47,P=.048),Stroke Unitでの転倒(OR 2.48,95%CI,1.16-5.31,P=.019),SwePASSで評価した姿勢制御が,引き続き転倒の繰り返しリスクと統計的に有意に関連していました。

そして、不良な姿勢制御(SwePASS ≦24)では、SwePASS ≧31の参加者と比較して、ORは3.06(95%CI、1.30-7.17、P=.010)、中程度の姿勢制御(SwePASS 25-30)では、ORは2.62(95%CI、1.18-5.81、P=.018)となり、転倒の繰り返しのリスクに関連していました。

まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. Stroke Unit入院時から脳卒中発症後12ヵ月までの転倒再発の予測因子として、『姿勢制御障害』、『急性期での歩行補助具の使用』があげられる。
  2. Stroke Unit退院後から脳卒中発症後6ヵ月までの転倒再発の予測因子として上記に加えて『入院中の転倒歴』があげられる。

転倒を繰り返す可能性が高い患者の把握に上記の結果は役立つと思います。
ただし、外部妥当性といって、自分の勤める病院でもあれはまるかは更なる研究が必要です。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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