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急性期脳卒中患者において早期離床プログラムは効果的なのか?

2021/12/06

運動療法 早期離床 脳卒中 論文紹介

t f B! P L

皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

早期リハビリテーションはガイドラインでも推奨されていますが、
標準早期リハビリテーション(ベッド上介入)と比較して、
本当に早期離床プログラムが有効どうか疑問に思ったことはありませんか?

実は標準早期リハビリテーション(ベッド上介入)と同等の訓練時間で比較した場合、
早期離床プログラムはメリットがあるかもしれません

なぜなら脳卒中の機能回復は、
能動的プロセス経験依存的プロセスの組み合わせによって起こる可能性があるからです。

この記事では早期リハビリテーションとして、
早期離床群と標準早期リハビリテーション(ベッド上介入)おいて
同等の訓練時間実施した場合、
どのような違いが表れるかを述べたいと思います。

この記事のKey Questionは、

  1. 同等の訓練時間を実施した場合、早期離床は標準早期リハビリテーション(ベッド上介入)と比較して効果的であるか?

この記事を読むと、
早期リハビリテーションではベッド上介入するよりも離床される方がメリットが大きいことが理解できます。
お付き合い頂けたら幸いです。

今回紹介する早期リハビリテーションとは

今回紹介する論文は、
Neurorehabil Neural Repairで2020年に出版された
Early Mobilization of Mild-Moderate Intracerebral Hemorrhage Patients in a Stroke Center: A Randomized Controlled Trialです。

ここでの早期リハビリテーション脳出血発症後24-72時間以内の介入を指します。
これは一般的な早さではないでしょうか。

以下、長くなりますが、今回の主張の前提条件を説明します。

対象者は、
・取り込み基準:
脳出血後24時間以内に入院、片麻痺を伴う初発の脳出血、脳卒中発症後72時間以内に離床(早期介入)の禁忌がないこと(医療チームの臨床判断に基づき、安静時の収縮期血圧(SBP)160mmHg未満、安静時心拍数130bpm未満、酸素飽和度92%以上(補給なし)、介入前に水頭症がないこと)

・除外基準:
外傷、手術、脳卒中からの出血性変化、または腫瘤による二次的な脳出血、一人暮らしで重度の失語症・言語障害・認知障害のためにベースライン調査に参加できないこと、早期離床を妨げるその他の医学的疾患がある場合(重度の心不全、急性冠症候群、活発な消化管出血、下肢障害など)、脳卒中発症後24時間以内に症状が急速に悪化した患者(NIHSSスコアが4ポイント以上変化した患者)、直ちに手術を受けた患者、急速に悪化する疾患(末期がんなど)の診断を同時に受けた患者、インフォームド・コンセントが得られない場合。

今回紹介する研究にエントリーするだけで、かなりの制限があることが分かります。


次に介入についてですが、
・介入頻度
EM群とSER群のすべての理学療法は、週5日、1日1回、1回あたり30分で同等の訓練量が提供された。
休息は必要に応じていつでも可能であったが,トレーニングの総時間を計算する際には考慮しなかった。

・介入の違い:
SER群;ベッド上トレーニング(座位はベッドアップ45°まで)
EM群;離床(端座位保持、立位保持、ステップ等)
※脳卒中センターを出たらSER群でも離床を実施

・介入中の注意点:
離床時にバイタル変動あれば戻し、血圧と心拍数のモニタリングも行った。
神経学的な悪化、迷走神経反応(徐脈または吐気)、SBP180mmHg以上、または30mmHg以上の症状のある血圧低下に基づいて、耐性低下の兆候が見られた患者は、ベッドに戻された。

整理すると、同等の訓練時間であり、介入時は神経症状の増悪およびバイタルのモニタリングを実施して、問題があればベッドに戻す対応が取れています
また、標準リハビリテーション群は脳卒中センターにいる間はヘッドアップ45°までで活動が制限されています


最後に研究開始時の対象者の特性ですが、
・脳卒中重症度:
標準早期リハビリテーション群(SER群);中央値6.5 、範囲2-15
早期離床群(EM群);中央値5、範囲2-20

・発症から介入までの時間:
SER群;47.70 ± 16.77時間
EM群;41.80 ± 17.07時間

・発症から離床までの時間:
SER群;135.02 ± 33.05時間
EM群;51.60 ± 14.15時間

整理すると、重症度は軽度~中等度であり、発症から介入までの時間に群間差はなかったが、発症から離床までは早期離床群が有意に早いことがわかります

早期離床の有用性

In conclusion, early mobilization in a stroke center within 24 to 72 hours of stroke onset, specifically in patients with mild or mild-moderate ICH, and using an EM protocol with standard intervention time and session frequency, may be more effective than standard early rehabilitation in achieving functional independence within 3 months of stroke.
引用:Early Mobilization of Mild-Moderate Intracerebral Hemorrhage Patients in a Stroke Center: A Randomized Controlled Trial. Yen HC, Jeng JS, Chen WS, Pan GS, Chuang Pt Bs WY, Lee YY, Teng T. Neurorehabil Neural Repair (IF: 3.92; Q2). 2020 Jan;34(1):72-81.

論文の結論は、
早期リハビリテーションにおいてプログラム選択としてベッド上介入よりも離床プログラムを選択することで3ヵ月以内の機能的自立度達成に効果的である可能性があります

今回の論文では、機能的自立度をFIMで評価していました。

合計スコア以外に下位項目としてセルフケア、移乗・移動でも分析されていましたが、
発症後2週間・4週間・3ヵ月後で群間差を認めていました。

ただし、姿勢制御コントロールの評価に関しては群間差を認めていませんでした。


まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 脳卒中早期リハビリテーションにおいて、神経症状増悪やバイタル変動がない状態での早期離床は、ベッド上介入と比較して3ヵ月以内の機能的自立に有効である可能性がある

今回紹介した論文の面白い点は、
早期離床群と標準早期リハビリテーション群で初回の介入までの時間および訓練量が同等であったという点だと思います。

私たちは離床時神経症状増悪の確認バイタルチェックを行うと思います。
そこが問題なくクリアできた場合、早期リハビリテーションとして離床を選択することがより良い機能的予後につながる可能性があることに興奮を感じました。

また、フィジオライオンの経験としては、
Stroke care unitである程度離床されていれば、
一般病棟に転棟してもその離床が基準となることで患者の入院中の能動的な活動量に良い影響があるのではないかと考えています。

逆に、Stroke care unitで離床が進んでいないと、
一般病棟ではマンパワーが落ちますのでより離床に消極的になってしまい、
結果的に入院中の能動的な活動量の低下につながる可能性はないでしょうか?


最後に結論の解釈の注意点として以下の2点が挙げられます。
・今回紹介した論文では対象が、脳出血で重症度が軽度~中等度となっており、比較的機能的予後が良好な患者が対象の研究となっている点。
取り込み・除外基準および離床の中止基準を定めて安全に実施できるように努めている点。


今回は早期離床に関して解説しましたが、超早期離床に関して以下の記事で解説しています。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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