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【回復期リハビリに転院する脳卒中患者限定】良好な機能を獲得するための予測因子とは?

2021/12/09

早期離床 脳卒中 予後予測 論文紹介

t f B! P L


皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

脳卒中患者では急性期病院からよく回復期リハビリテーション病院に転院します。
しかし、どの程度の機能回復が望めるかを患者・家族に説明する際に、
どの情報で機能的予後を判断すればいいか悩んでいませんか?

実は急性期の情報だけでも
回復期リハビリテーション病院退院後の機能的予後を予測することはある程度可能です

この記事では回復期リハビリテーション病院に転院する患者を対象に、
脳卒中患者の機能予後を左右する脳卒中後早期の要因について解説します。

この記事のKey Questionは、

  1. 回復期リハビリテーション病院退院後の機能的予後予測を行うために見るべき急性期の因子とは?

この記事を読むと急性期病院での情報で、
患者・家族に回復期リハビリテーション病院後の機能的予後予測の情報を伝えるための
補完的な視点を得ることができます。
お付き合い頂けたら幸いです。

回復期リハビリテーション病院に転院する患者の特性とは?

この記事では回復期リハビリテーション病院に転院する人を対象として、
急性期での情報を基に発症6か月後、
つまり回復期リハビリテーション病院退院後の機能を予測すること
を伝えることを目的としています。

そもそも回復期リハビリテーション病院に転院する脳卒中患者ってどんな特性をもっているでしょうか?

一般的に急性期病院からの主な転帰先は
自宅回復期リハビリテーション病院療養施設があげられると思います。

回復期リハビリテーション病院への転院の基準は各急性期病院によって多少異なると思いますが、
重度の障害(modified Rankin Scaleが3~5)がある場合
リハビリテーションを行うことで機能状態の変化が期待できる場合など、
機能やADL改善が見込まれる患者が対象になってきます。

回復期リハビリテーション病院に転院する脳卒中患者の予後予測

急性期の情報を基に行われている予後予測研究は数多くありますが、
回復期リハビリテーション病院へ転院する脳卒中患者に限定したものはあまり多くありません。

今回紹介する論文は、
「Acute Phase Predictors of 6-Month Functional Outcome in Italian Stroke Patients Eligible for In-Hospital Rehabilitation」です。

研究対象は、この記事のテーマでもある回復期リハビリテーション病院に転院する患者が対象です。
厳密にはイタリアの研究なので日本とは制度が違います

研究の同意書は発症から48時間以内に患者本人からとられています。

初回評価時の患者特性として、
NIHSS(脳卒中重症度をみる指標)が中央値8、範囲4.8-14.0
※重症度分類:軽度0-7、中等度8-16、重度17以上(文献によって異なる)
Barthel Indexが中央値25.0、範囲5.0-50.0
回復期リハビリテーション病院に入院するまでの期間が中央値11.0日、範囲7.0-15.0
となっています。

The four clinical factors influencing both outcome parameters (mRS and BI scores)—young age, patients without TACI syndrome (total anterior circulation infarction), good continence, and early out-of-bed mobilization within 48 hrs—can be considered strong acute phase indicators for recovery at 6 mos.
引用:Acute Phase Predictors of 6-Month Functional Outcome in Italian Stroke Patients Eligible for In-Hospital Rehabilitation. Franceschini M, Fugazzaro S, Agosti M, Sola C, Di Carlo A, Cecconi L, Ferro S; Italian Study Group on Implementation of Stroke Care (ISC Study). Am J Phys Med Rehabil. 2018 Jul;97(7):467-475.

論文の結論は、
6ヵ月後の良好な機能(modified Rankin Scale ≥2およびBirthel Index ≥75)を予測する因子として、
若年前方循環の広範な障害を発症していない患者失禁なし48時間以内の離床が選択されました。

高齢であったり、前方循環の広範な損傷があると退院後の良好な機能改善や日常生活でのパフォーマンスが得られにくいことは直感的に分かります。

その他に失禁が機能予後に関連する点を考えると排尿障害等への対応が必要になるかもしれません。

また、ここで特に強調しておきたいのが48時間以内の離床ができるかどうかが、
回復期リハビリテーション病院退院後の機能予測因子である点です。

フィジオラインとしては早期離床介入であって、
予後予測の因子として考えていなかったので、大変興味深い結果でした。


解釈の注意点

上記の結論の解釈には以下の3点に注意してください。

・同意を書面で得られるレべルが対象
疎通が取れない患者は対象に含まれていませんので、上記の結果を適用には対象の属性を把握する必要があります。

・決定係数(R2)が低い
決定係数は今回選択された因子が機能的予後をどの程度説明できるかの割合を表しています。
本研究では37-48%となっており、
半分以上が今回選択した因子だけでは説明しきれていないことを意味します。
そのため予後予測の補足程度に思っていた方がいいかもしれません

※分野によって異なるり決まりもないので参考までに
精度が良い;R2 ≥ 0.8、精度やや良い;R2 ≥ 0.5、精度良くないR2 < 0.5

・早期離床すれば予後が良くなるわけではない
今回の結果を真に受けて、脳卒中患者を48時間以内に離床させようと思った方は早合点です。
今回紹介した研究は前向き観察研究です。
予測モデルを作成する上である程度因果関係は想定しますが、
選択で得られた因子に対して介入したからといって、結果が得られるとは限りません。
今回の件であれば、48時間以内の離床の有無で別の研究を行って因果関係を証明する必要があります。


まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 回復期リハビリテーション病院に転院する脳卒中患者において、6か月後の良好な機能(Barthel index ≧75点、modified Rankin Scale ≧2)を予測する因子として、若年、前方循環の広範な障害でない、失禁がない、発症後48時間以内の離床があげられる

今回紹介した研究は前向きの観察研究であり、
予後予測因子として48時間以内の離床が因子として選択されましたが、
決して48時間以内に離床されれば機能的予後が良好になるということではないので十分注意してください。

この点に関する深掘りは次回の記事で解説したいと思いますのでお楽しみにしておいてください!!

退院後の地域での歩行能力を予測するために見るべき評価ポイントに関しては以下の記事で解説しています。興味があれば読んでください。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。

昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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