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【変形性関節症編】その運動療法は目の前にいる患者に提供して効果が出せるの?

2022/01/19

運動療法 整形疾患 予後予測 臨床経験

t f B! P L

皆さんこんにちはフィジオライオンです。

現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

突然ですが、

目の前に患者さんに対して、
これから提供する運動療法で結果が出せるかどうか心配になったことはありませんか?

実はスクリーニング検査を行うことで治療効果を予測できる可能性があります。

過去の研究で患者さんに実際に理学療法を提供して、
治療後の効果を介入前の評価から予測した研究があります。

この記事では
変形性関節症の保存療法として
理学療法が有効であるかを見極めるためのスクリーニング検査の一例をお伝えします。

この記事のKey Questionは、

  1. 変形性関節症の保存療法として理学療法が有効であるかを見極める介入前に評価しておくべき変数とは?

この記事を読むと、
変形性股関節症の保存療法を提供する上で、
理学療法に反応するかどうかを判断するための参考になります。
お付き合い頂けたら幸いです。

運動療法Aが有効な患者を予測するためのスクリーニング検査の必要性

担当になった患者さんが目の前にいます。

フィジオライオンは、
闇雲に理学療法を提供するのではなく、
今から提供される運動療法が目の前にいる患者さんに効果を発揮するかどうかを判別する必要性があると考えています。

なぜなら、
リハビリ対象患者さんは
個別性が高いため、同じ運動療法を行っても効果には差が出てしまうからです。

標準化した治療がすべての患者さんに効果的であれば、それほど楽なことはないですが…

また、臨床経験も非常に重要ですが、
目の前の患者さんに対していきなり運動療法を始めるのではなく、
しっかりと適切な評価を行った上で有効な運動療法を見極める能力を獲得することが、
質の高い理学療法提供につながるのではないでしょうか?

例えば、医師から
「効果あるかは注射を打ってみないとわからいけど、とりあえず打ちましょう!」
と言われる場合と、

「こういった検査所見を持つ人は7割の方が症状が軽減することが分かっているので、注射しましょう!」
と言われる場合で、

皆さんはどちらの医者を信頼するでしょうか?

理学療法も同じだと思います。

「こういった所見を持つ方は、この運動療法を受けると7割改善が得られますよ!」

という判断基準を持って患者さんに接する必要性が今後高まるのではないでしょうか?

残念ながら往々にして経験則が物を言う業界であることは否めないですが、
医療として運動療法を提供するのであれば上記の考え方は必要な視点だと思います

理学療法が有効な変形性関節症患者を予測するための変数

今回は変形性関節症(股関節症と膝関節症)に対して理学療法を提供し、
効果的であった患者を予測することを検証した研究を2つ紹介します。

1つ目の研究は、
変形性股関節症に対して運動療法、徒手療法(どちらかあるいはその両方)を実施し
効果が出た患者を予測する因子を検討した研究です。

RCT研究の二次利用研究で、
理学療法を実施した効果を非応答者応答者の2群に分類して検討しています。

Five baseline variables (unilateral hip pain, age of ≤58 years, pain of ≥6/10 on a numeric pain rating scale, 40-m self-paced walk test time of ≤25.9 seconds, and duration of symptoms of ≤1 year) were retained in the final model. Failure to exhibit a condition of 1 of the 5 predictor variables decreased the posttest probability of responding favorably to physical therapy intervention from 32% to <1% (negative likelihood ratio0.00, 95% confidence interval0.00–0.70). Having at least 2 out of 5 predictor variables at baseline increased the posttest probability of success with physical therapy intervention from 32% to 65% (positive likelihood ratio3.99, 95% confidence interval=2.66–4.48), and having 3 or more of 5 predictor variables increased the posttest probability of success to 99% or higher.
引用:Wright AA, Cook CE, Flynn TW, Baxter GD, Abbott JH. Predictors of response to physical therapy intervention in patients with primary hip osteoarthritis. Phys Ther. 2011 Apr;91(4):510-24. doi: 10.2522/ptj.20100171. Epub 2011 Feb 10. PMID: 21310898.

論文の結果は、

応答者を予測するために以下の5つの介入前評価項目が選択されました。

・片側股関節痛(両側でない)
・年齢58歳以下
・疼痛評価スケールの数値6/10以上
・40m快適歩行時間25.9秒以下
・症状持続期間1年以下


さらに、5つの予測項目の内、
1つの評価項目も満たさない場合
理学療法介入に良好に反応するテスト後の確率は32%(この研究の実際の成功率)から1%未満に減少した

2つ以上の評価項目を満たす場合
理学療法介入が成功するテスト後の確率は32%
(この研究の実際の成功率)から65%に増加した。

3つ以上の評価項目を満たす場合
理学療法介入が成功するテスト後の確率は32%(この研究の実際の成功率)から99%以上に増加した。

評価項目が1つも含まれなければ、理学療法を行っても効果が薄いことが言えますし、

逆に2以上の項目が当てはまれば、理学療法の効果が期待できることを意味しています。

上記の評価項目は理学療法士でも簡単に取得できる項目となっているため参考にしやすいと思います。


2つ目の研究は、

変形性膝関節症に対して股関節周囲筋への運動療法(主にセラバンド使用)を実施し
効果が出た患者を予測する因子を検討した研究です。

介入後に運動療法の効果を非応答者低応答者高応答者の3群に分類して、その予測変数を検討しています。

Lower patient-reported function in daily living (ADL) scores and hip frontal plane kinematics during the loading response were most important in classifying High-Responders from other sub-groups, while a combination of hip, knee, ankle kinematics were used to classify Non-Responders from Low-Responders.
引用:Kobsar D, Osis ST, Hettinga BA, Ferber R. Gait Biomechanics and Patient-Reported Function as Predictors of Response to a Hip Strengthening Exercise Intervention in Patients with Knee Osteoarthritis. PLoS One. 2015 Oct 7;10(10):e0139923. doi: 10.1371/journal.pone.0139923. PMID: 26444426; PMCID: PMC4596804.

論文の結果は、

・高応答者とその他のサブグループの分類には、
患者報告による日常生活機能(ADL)スコアの低下と荷重反応時の股関節前額面運動力学が最も重要である。

非応答者と低応答者の分類には、
股関節、膝、足関節の運動力学の組み合わせが選択された。

フィジオライオン的な解釈では、
・高応答者は他のサブグループと比較して、ADLが低下しており、荷重応答期に膝内反を助長している原因として支持脚の股関節内転が観察される患者により有効である可能性があります。

・低応答者は非応答者と比較して、つま先離地時に股関節伸展に対して足底屈が大きくなる可能性があります。

まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 変形性股関節症への理学療法であれば、片側股関節痛、年齢、疼痛の強さ、歩行速度、症状持続期間を評価する。
  2. 変形性膝関節症へのセラバンドを使用した股関節周囲筋への運動療法であれば、「ADL低下と荷重応答時の股関節前額面運動力学」や「つま先離地時に股関節伸展に対する足底屈の運動力学」を評価する。

上記の結論は、
ある特定の集団を対象とした結果であり、一般化するには更なる研究が必要です。
あくまでの一例であることをご承知おきください。

今回の記事を書いた目的として、
皆さんが運動療法を実施する上で、
目の前の患者さんに効果的であるかどうかをスクリーニングする視点を持ってほしいとの思いがありました。

明日からの臨床に少しでも活かして頂けたら幸いです。


このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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