皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。
突然ですが、
目の前に患者さんに対して、
これから提供する運動療法で結果が出せるかどうか心配になったことはありませんか?
実はスクリーニング検査を行うことで治療効果を予測できる可能性があります。
過去の研究で患者さんに実際に理学療法を提供して、
治療後の効果を介入前の評価から予測した研究があります。
この記事では
変形性関節症の保存療法として
理学療法が有効であるかを見極めるためのスクリーニング検査の一例をお伝えします。
この記事のKey Questionは、
- 変形性関節症の保存療法として理学療法が有効であるかを見極める介入前に評価しておくべき変数とは?
変形性股関節症の保存療法を提供する上で、
理学療法に反応するかどうかを判断するための参考になります。
運動療法Aが有効な患者を予測するためのスクリーニング検査の必要性
闇雲に理学療法を提供するのではなく、
今から提供される運動療法が目の前にいる患者さんに効果を発揮するかどうかを判別する必要性があると考えています。
リハビリ対象患者さんは
個別性が高いため、同じ運動療法を行っても効果には差が出てしまうからです。
理学療法が有効な変形性関節症患者を予測するための変数
Five baseline variables (unilateral hip pain, age of ≤58 years, pain of ≥6/10 on a numeric pain rating scale, 40-m self-paced walk test time of ≤25.9 seconds, and duration of symptoms of ≤1 year) were retained in the final model. Failure to exhibit a condition of 1 of the 5 predictor variables decreased the posttest probability of responding favorably to physical therapy intervention from 32% to <1% (negative likelihood ratio0.00, 95% confidence interval0.00–0.70). Having at least 2 out of 5 predictor variables at baseline increased the posttest probability of success with physical therapy intervention from 32% to 65% (positive likelihood ratio3.99, 95% confidence interval=2.66–4.48), and having 3 or more of 5 predictor variables increased the posttest probability of success to 99% or higher.引用:Wright AA, Cook CE, Flynn TW, Baxter GD, Abbott JH. Predictors of response to physical therapy intervention in patients with primary hip osteoarthritis. Phys Ther. 2011 Apr;91(4):510-24. doi: 10.2522/ptj.20100171. Epub 2011 Feb 10. PMID: 21310898.
論文の結果は、
応答者を予測するために以下の5つの介入前評価項目が選択されました。
・片側股関節痛(両側でない)
・年齢58歳以下
・疼痛評価スケールの数値6/10以上
・40m快適歩行時間25.9秒以下
・症状持続期間1年以下
さらに、5つの予測項目の内、
・1つの評価項目も満たさない場合、
理学療法介入に良好に反応するテスト後の確率は32%(この研究の実際の成功率)から1%未満に減少した。
・2つ以上の評価項目を満たす場合、
理学療法介入が成功するテスト後の確率は32%(この研究の実際の成功率)から65%に増加した。
・3つ以上の評価項目を満たす場合、
理学療法介入が成功するテスト後の確率は32%(この研究の実際の成功率)から99%以上に増加した。
評価項目が1つも含まれなければ、理学療法を行っても効果が薄いことが言えますし、
逆に2以上の項目が当てはまれば、理学療法の効果が期待できることを意味しています。
上記の評価項目は理学療法士でも簡単に取得できる項目となっているため参考にしやすいと思います。
2つ目の研究は、
変形性膝関節症に対して股関節周囲筋への運動療法(主にセラバンド使用)を実施し
効果が出た患者を予測する因子を検討した研究です。
介入後に運動療法の効果を非応答者、低応答者、高応答者の3群に分類して、その予測変数を検討しています。
Lower patient-reported function in daily living (ADL) scores and hip frontal plane kinematics during the loading response were most important in classifying High-Responders from other sub-groups, while a combination of hip, knee, ankle kinematics were used to classify Non-Responders from Low-Responders.
引用:Kobsar D, Osis ST, Hettinga BA, Ferber R. Gait Biomechanics and Patient-Reported Function as Predictors of Response to a Hip Strengthening Exercise Intervention in Patients with Knee Osteoarthritis. PLoS One. 2015 Oct 7;10(10):e0139923. doi: 10.1371/journal.pone.0139923. PMID: 26444426; PMCID: PMC4596804.
論文の結果は、
・高応答者とその他のサブグループの分類には、
患者報告による日常生活機能(ADL)スコアの低下と荷重反応時の股関節前額面運動力学が最も重要である。
股関節、膝、足関節の運動力学の組み合わせが選択された。
フィジオライオン的な解釈では、
・高応答者は他のサブグループと比較して、ADLが低下しており、荷重応答期に膝内反を助長している原因として支持脚の股関節内転が観察される患者により有効である可能性があります。
・低応答者は非応答者と比較して、つま先離地時に股関節伸展に対して足底屈が大きくなる可能性があります。
まとめ
- 変形性股関節症への理学療法であれば、片側股関節痛、年齢、疼痛の強さ、歩行速度、症状持続期間を評価する。
- 変形性膝関節症へのセラバンドを使用した股関節周囲筋への運動療法であれば、「ADL低下と荷重応答時の股関節前額面運動力学」や「つま先離地時に股関節伸展に対する足底屈の運動力学」を評価する。
皆さんが運動療法を実施する上で、