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【まとめ】拘縮予防・治療に対する治療戦略

2022/04/27

拘縮 実践 理学療法用語 臨床経験

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皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて10年目(2022年時点)となります。

理学療法士として働いて、拘縮予防・治療に関わらない方はごく少数であると思います。

そのため、理学療法士が拘縮予防・治療することがあたり前すぎて、あまり気に留めていない方もいるのではないでしょうか?

フィジオライオンは、人工呼吸器を装着している終末期の患者を受け持った際に、拘縮がみるみる進行していまい非常に悩んだ経験があります。

ただ、恥ずかしながら拘縮予防・治療は何となく行っており、何をどう改善すればよいのか皆目見当もづかず、改めて拘縮予防・治療について勉強し直しました。

この記事のKey Questionは、

  1. フィジオライオンが考える拘縮予防・治療に対する治療戦略とは?

この記事を読むとフィジオライオンのフィルターがかかっていますが、
目の前の拘縮が進む可能性がある患者さん、あるいは既に拘縮が進行中である患者さんを受け持って悩んでいる方には一読する価値があると思います。

※当ページでは概要を説明してますので、詳細が気になる方は各リンク先をご覧ください。

また、当ページは、『エンド・オブ・ライフケアとしての拘縮対策』を参考にまとめてありますので、詳細が気になる方は以下のURLから成書をご確認ください。

ROM制限と拘縮は同義語ではない?また、理学療法の治療対象となるROM制限とは?

ROM制限の様々な原因

ROM制限には様々な原因が考えられます。
その原因は大きく『関節軟部組織』『関節構成体』『その他』の3つに分類できます。

関節軟部組織:皮膚、骨格筋、靭帯、関節包など
関節構成体:関節軟骨、骨
その他:関節内遊離体、骨折・脱臼に伴う骨の偏位、強直

拘縮の定義

ここで拘縮の定義をおさらいしたいと思います。
関節周囲に存在する軟部組織の器質的変化に由来したROM制限と定義されており、これは筋収縮が惹起されないことが前提となっている。
引用:福田卓民,沖田実:エンド・オブ・ライフケアとしての拘縮対策.三輪書店,東京, 2014.
ポイントは2点あり、
関節周囲に存在する軟部組織の器質変化
筋収縮が惹起されないこと

上記2点を満たすROM制限を『拘縮』と定義しています。

実臨床でのROM制限とは?

拘縮の定義は上記の通りですが、実臨床では非常に扱いにくいものとなっています。
というのも、臨床で遭遇するROM制限は、筋収縮の影響を受けている場合が多いからです。

そのため、実臨床ではROM制限を関節周囲軟部組織の器質的変化と筋収縮の影響が加味された結果と捉えることが妥当であると考えます。

理学療法の治療対象となるROM制限

理学療法士が治療対象とするROM制限は、筋収縮の要素拘縮の要素が合わさったものと想定できます。

前者の筋収縮の要素は、リラクゼーションなど理学療法で対応可能であることはイメージしやすいと思います。

また、後者の拘縮の要素は、拘縮の定義より関節周囲軟部組織の器質的変化であり、
関節周囲軟部組織の伸張性低下は回復可能な可逆的変化である場合が多く、
理学療法の治療対象となるROM制限と考えられます。

拘縮予防・治療に使えるフレームワークとは?

臨床で拘縮予防・治療を行う上で闇雲に治療しても自身が何に対してアプローチしているか不明確になってしまい自己満足の治療介入となってしまいます。

効果的な介入は、ある原因Aに対して治療Bを提供するといったように、
ROM制限の原因と自分の治療が1:1となるような関係であること
が必要だとフィジオライオンは考えます。

そのためには、拘縮予防・治療を行う際にROM制限を分類したフレームワークが必要であると考えられます。

以下に紹介するフレームワークは長崎大学大学院の沖田実先生が提唱しているものになります。
このフレームワークを利用して、
自分がどこにアプローチしているかを明確にすることが臨床でのスキルアップにつながると考えます。

拘縮の病態とは?

拘縮の病態は、よくわかっていないのが現状です。
現在、研究段階であり、以下に沖田先生が先行研究に基づいて立てた仮説を提示します。
仮説レベルではありますが、
拘縮は関節の長期固定が引き金で、組織の酸素欠乏および水分やムコ多糖類の減少が生じ、組織の弾性低下や組織の線維化によって発生・進行する可能性があります

また近年、関節の長期固定による組織の酸欠状態が拘縮を引き起こすことが注目を浴びています。

拘縮発生・進行要因とは?また、筋性拘縮の進行のポイントとは?

拘縮発生・進行要因とは?

年齢罹病期間ADL能力などが拘縮の発生要因として関与することが示されており、脳血管疾患においては麻痺の重症度や痙縮が、またその他としては痛み浮腫などが拘縮の発生や進行を左右するとされています。

これらの関連要因の中で年齢を除くと、関節の不動(immobilization)を惹起させるという点では共通の問題を有しており、このこと自体が拘縮の発生や進行に直接的に影響している可能性があります。

筋性拘縮の進行のポイントとは?

動物実験では不動による足関節背屈可動域の制限は不動期間の延長とともに進行します。
ただし、その進行は不動4週間でピークをむかえます。

また、2~4週は骨格筋が拘縮の責任病巣それ以降は関節包が拘縮の責任病巣であると考えられています。

以上の点から、筋性拘縮にアプローチする場合不動4週未満での介入が有効であると考えられます。

拘縮予防・治療にストレッチングは有効か?

2017年にコクランレビュー拘縮予防・治療に対するストレッチングは有効であるかに関してメタアナリシスが行われました。

以下が、結果となっています。
There was high-quality evidence that stretch did not have clinically important short-term effects on joint mobility in people with neurological conditions (MD 2°; 95% CI 0° to 3°; 26 studies with 699 participants) or non-neurological conditions (SMD 0.2, 95% CI 0 to 0.3, 19 studies with 925 participants).
引用:Stretch for the treatment and prevention of contractures.
Harvey LA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017. 
フィジオライオンの訳は以下の通りです。
神経学的状態(MD 2°、95%CI 0°~3°、26件の研究、699名)または非神経学的状態(SMD 0.2、95%CI 0~0.3、925名の研究)において、ストレッチングは関節可動性に臨床的に重要な短期効果をもたらさないという高品質のエビデンスが存在することが示された。

残念ながら現時点では、
拘縮予防・治療にストレッチングは有効でない高品質のエビデンスがあるようです。

衝撃的な結論ですよね...
皆さんんは拘縮予防・治療でストレッチを行っていますか?
正直、フィジオライオンは行っています。

医療として理学療法を提供する上で、ストレッチングを拘縮予防・治療で患者さんに提供するのは問題ある状態であると考えられます。
「なぜ、有効でないかのか?」、「別の有効な手段はあるか?」等、考える必要性がありますね。

筋性拘縮による伸張性低下への有効なアプローチとは?

筋性拘縮への治療を考えが場合、
ストレッチングは筋に伸張ストレスを与え、筋長の短縮に有効そうではありますが、
伸張性低下への対策もの考える必要があります。

下図はフィジオライオンが作成した不動による筋性拘縮進行への影響度イメージ図です。
不動1週以降は特に伸張性低下の影響が強いと考えれます。
そして、不動4週で筋性拘縮による変性はある程度完成していることが推察されます。
その伸張性低下は筋膜の線維化、つまりコラーゲン線維の増生が主要な原因と考えられています。そのため、この線維化へのアプローチを別途で治療プログラムに組み込む必要性があると考えます。

筋性拘縮予防・治療を行う上で一番重要なポイントは、
基本的に器質的変化を生じると元の組織に戻すことは困難であるという点です。

したがって、筋性拘縮治療・予防の最大のポイントは筋膜の線維化=コラーゲン線維の増生進行に対して不動4週間より前に介入することであると推察されます。

筋膜の線維化不動による組織の低酸素状態がトリガーと考えられています。
そのため、伸張性低下へのアプローチとしては、一義的に不動状態の解除が重要であり、
そして、次に骨格筋の低酸素状態緩和ためには血流促進が有効であると考えられます。

【まとめ】フィジオラインによる拘縮予防・治療に対する指針案

拘縮予防・治療、特に筋性拘縮に関して述べてきました。
最後に、今後の臨床につなげるためにフィジオライオンが現状考える筋性拘縮予防・治療に対する指針を提案して終わりにしたいと思います。

フィジオライオン的まとめは、
  1. ❶日常生活を整え、関節の不動による低酸素状態の解除
  2. ❷拘縮発生・進行の原因の排除
  3. ❸拘縮完成前に筋長短縮および伸張性低下の予防・治療に対して物理療法+運動療法を提供


このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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