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急性期脳卒中患者の歩行獲得の阻害要因とは?

2022/02/10

脳卒中 歩行 予後予測 論文紹介

t f B! P L

皆さんこんにちはフィジオライオンです。

現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。

急性期において歩行獲得を目標に立てて理学療法を行うことは多いと思います。

しかしながら、

歩行獲得までにかかる日数は患者によって異なり、目標達成までの日数を予測することに悩んでいませんか?

今回紹介する論文は、脳卒中患者の歩行獲得を遅らせる要因を検討したものになります。


この記事のKey Questionは、

  1. 脳卒中患者の歩行獲得を遅らせる要因は何か?

この記事を読むと、歩行獲得を阻害する要因を知ることができます。
お付き合い頂けたら幸いです。

歩行獲得までの日数に関わる因子を知る必要性

脳卒中患者のリハビリを行う上で、
直ぐに歩行獲得を達成する患者とそうでない患者がいます。

臨床経験的に、
高齢であるほど歩行獲得まで時間がかかる」とか、
麻痺が重度だと歩行獲得まで時間がかかる」など
思い当たる要因はいくつかあると思います。

歩行獲得までの日数に関わる因子を知ることは、質の高い理学療法を提供するためには重要であると考えます。

なぜなら、
担当する患者が歩行獲得までの日数に関わる因子を持っているかによって
治療戦略が異なってくるからです。

具体的に臨床経験的に先ほど挙げた要因でいえば、
若年者と高齢者では、
同じ訓練量をこなすことが難しい点や、
そもそも脳卒中後の残存機能が異なってくるため、
運動療法プログラムは異なってくるはずです。

同様に、
麻痺の重症度の違いによっても歩行獲得のための運動療法プログラムは異なると思います。

急性期脳卒中患者の歩行獲得の阻害要因

今回は、国際的な大規模研究データを用いて検証した論文を紹介したいと思います。

タイトルは、
「Factors associated with time to independent walking recovery post-stroke.」であり、
早期離床研究で有名なAVERT Studyのデータを用いた研究になります。

発症から3ヵ月の期間で、
50m歩行を介助なしで可能になるまでの日数を記録し、
各要因ごとにその影響を検討しています。


Adjusted Cox regression indicated that slower return to independent walking was associated with older age (caHR 0.651, 95% CI 0.569 to 0.746), diabetes (caHR 0.836, 95% CI 0.740 to 0.945), severe stroke (caHR 0.094, 95% CI 0.072 to 0.122), haemorrhagic stroke (caHR 0.790, 95% CI 0.675 to 0.925) and right hemisphere stroke (caHR 0.796, 95% CI 0.714 to 0.887).
引用:Kennedy C, Bernhardt J, Churilov L, Collier JM, Ellery F, Rethnam V et al. Factors associated with time to independent walking recovery post-stroke. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2021;92(7):702-8.


論文の結果は、

調整後のCox回帰では,
自立歩行獲得への遅延には,

高齢(caHR 0.651,95% CI 0.569~0.746)、 
糖尿病(caHR 0.836,95% CI 0.740~0.945)、
重症脳卒中(caHR 0.094, 95% CI 0.072~0.122) 、
出血性脳卒中(caHR 0.790, 95% CI 0.675~0.925) 、
右半球脳卒中(caHR 0.796, 95% CI 0.714~0.887 )
と関連していました。

皆さん上記の結果はいかがでしょうか?
概ね臨床経験と一致しているのではないでしょうか?

上記の結果に関して補足説明をすると、
出血性脳卒中と虚血性脳卒中では、出血性脳梗塞の方が歩行獲得まで時間がかかります。
しかしながら、発症後3ヵ月時点では両者ともに同程度歩行獲得が可能とのことでした。
この様な結果は、発症初期の血腫拡大と脳浮腫の増大によるものと考えられます。
脳浮腫は通常2日以内に発生しますが、3週間まで持続することもある

その他に、
糖尿病末梢神経障害を含む慢性糖尿病合併症が歩行に影響を与えることが考えられますが、機能回復との因果関係ははっきりとはしていません

また、
右半球脳卒中では、左半側空間無視を代表とする視空間認知の障害が歩行獲得に影響していると考えられます。

まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 50mの自立歩行獲得の阻害要因として、高齢、糖尿病、重症脳卒中、出血性脳卒中、右半球脳卒中が挙げられる。

今回紹介した論文の結果は、
対象者が2104名と多く、国際的な研究であるため一般化しやすいと思います。

歩行獲得を目標とする際は、
阻害する要因を加味する必要性がありますし、

歩行に関連した研究を行う際は、
交絡因子として要因を検討することが必要性があると考えられます。

このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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