皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて9年目となります。
急性期において歩行獲得を目標に立てて理学療法を行うことは多いと思います。
しかしながら、
歩行獲得までにかかる日数は患者によって異なり、目標達成までの日数を予測することに悩んでいませんか?
今回紹介する論文は、脳卒中患者の歩行獲得を遅らせる要因を検討したものになります。
この記事のKey Questionは、
- 脳卒中患者の歩行獲得を遅らせる要因は何か?
歩行獲得までの日数に関わる因子を知る必要性
急性期脳卒中患者の歩行獲得の阻害要因
Adjusted Cox regression indicated that slower return to independent walking was associated with older age (caHR 0.651, 95% CI 0.569 to 0.746), diabetes (caHR 0.836, 95% CI 0.740 to 0.945), severe stroke (caHR 0.094, 95% CI 0.072 to 0.122), haemorrhagic stroke (caHR 0.790, 95% CI 0.675 to 0.925) and right hemisphere stroke (caHR 0.796, 95% CI 0.714 to 0.887).引用:Kennedy C, Bernhardt J, Churilov L, Collier JM, Ellery F, Rethnam V et al. Factors associated with time to independent walking recovery post-stroke. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2021;92(7):702-8.
論文の結果は、
調整後のCox回帰では,
自立歩行獲得への遅延には,
高齢(caHR 0.651,95% CI 0.569~0.746)、
糖尿病(caHR 0.836,95% CI 0.740~0.945)、
重症脳卒中(caHR 0.094, 95% CI 0.072~0.122) 、
出血性脳卒中(caHR 0.790, 95% CI 0.675~0.925) 、
右半球脳卒中(caHR 0.796, 95% CI 0.714~0.887 )
と関連していました。
皆さん上記の結果はいかがでしょうか?
概ね臨床経験と一致しているのではないでしょうか?
上記の結果に関して補足説明をすると、
出血性脳卒中と虚血性脳卒中では、出血性脳梗塞の方が歩行獲得まで時間がかかります。
しかしながら、発症後3ヵ月時点では両者ともに同程度歩行獲得が可能とのことでした。
この様な結果は、発症初期の血腫拡大と脳浮腫の増大によるものと考えられます。
※脳浮腫は通常2日以内に発生しますが、3週間まで持続することもある
その他に、
糖尿病は末梢神経障害を含む慢性糖尿病合併症が歩行に影響を与えることが考えられますが、機能回復との因果関係ははっきりとはしていません。
また、
右半球脳卒中では、左半側空間無視を代表とする視空間認知の障害が歩行獲得に影響していると考えられます。
まとめ
- 50mの自立歩行獲得の阻害要因として、高齢、糖尿病、重症脳卒中、出血性脳卒中、右半球脳卒中が挙げられる。