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歩行速度が遅い脳卒中片麻痺患者の歩行の共通した特徴とは?

2022/06/18

脳卒中 歩行 論文紹介

t f B! P L

皆さんこんにちはフィジオライオンです。
現在、急性期病院で理学療法士として働いて10年目(2022年度時点)となります。

皆さんは、
脳卒中片麻痺患者の歩行速度を改善するためのプログラムを組む際に、

どの点に着目すればいいのか悩んだことはありませんか?

1つのとっかかりとして、
歩行速度が遅い脳卒中片麻痺患者と非障害者の歩行がどのように違うか
を把握しておくことは、歩行観察・分析する上で非常に役立ちます。

歩行速度が遅い脳卒中片麻痺患者の共通した特徴が分かれば、
それに対して運動療法プログラムを組みことで、改善させられる可能性が出てきます。

この記事では、
同じ速度でトレッドミル歩行した際の
脳卒中片麻痺患者と非障害者の一貫した違いを明らかにして、
歩行速度が遅い脳卒中片麻痺患者の歩行の特徴
について述べたいと思います。

この記事のKey Questionは、

  1. 歩行速度が遅い脳卒中片麻痺患者の歩行の共通した特徴とは?

この記事を読むと明日からの脳卒中患者の歩行治療に役立つ視点が手に入ります。
お付き合い頂けたら幸いです。

脳卒中片麻痺患者の歩行の特徴を把握する必要性

急性期や回復期の脳卒中片麻痺患者に対して
歩行練習をただ闇雲にやっても寂しいことに機能改善は得られます。

やはり、自然回復の力はすごいですから...

しかしながら、
同時期は機能回復の方向性が決まる大事な時期でもあるため、
どのような歩行機能改善を促したいかをセラピストがイメージできていること
は非常に重要だと考えいます。

例えば、
今後の随意性の回復を見越して、より代償が少ない効率的な歩容を獲得するために、
どの代償動作を許し、どの代償動作は避けるのべきなのか。

自宅での生活を送る上で、どの程度の歩行速度獲得が必要であり、
どのようにその歩行速度に到達するための治療戦略を立てるか。

リハビリテーションが終了して自宅退院後、日常生活で歩行機能を維持するためにはどのような歩行を獲得すればよいか。

など、
フィジオライオン的には歩行練習において
ただの自然回復で獲得した歩行機能と、理学療法士が目的を持って誘導して獲得した歩行機能では大きな差が出てくると考えています。

そういった意味で、
歩行速度が遅い脳卒中片麻痺患者の歩行の共通した特徴を把握することで
最良な治療の糸口となる可能性があります。

脳卒中片麻痺歩行者と非障害者に一貫した違いはあるか?

今回紹介する論文のタイトルは、
「Gait differences between individuals with post-stroke hemiparesis
and non-disabled controls at matched speeds」
です。

トレッドミル歩行の速度を揃えた状態で、
片麻痺被験者と非障害者の間での歩容およびバイオメカニクス変数に
一貫した違いがあるかを検討した研究
になります。

一般的に片麻痺被験者の歩行には個人差があります

その中で、
非障害者と一貫した違いをあるかを明らかにすることは
脳卒中片麻痺患者の歩行を観察・分析する上で大いに役立ちます。

片麻痺被験者の対象者の歩行速度(平均±標準偏差)は、
0.53 ± 0.22m/sとなっています。

以下に一貫した違いを示します。

ーA large set of gait differences found between hemiparetic and non-disabled subjects was consistent with impaired swing initiation in the paretic limb (i.e., inadequate propulsion of the leg during pre-swing, increased percentage swing time, and reduced knee flexion at toe-off and mid-swing in the paretic limb) and related compensatory strategies (i.e., pelvic hiking and swing-phase propulsion and circumduction of the paretic limb).
ーA second set of gait differences found was consistent with impaired single limb support on the paretic limb (i.e., shortened support time on the paretic limb) and related compensatory strategies (i.e., exaggerated propulsion of the non-paretic limb during pre-swing to shorten its swing time).
引用:Gait differences between individuals with post-stroke hemiparesis and non-disabled controls at matched speeds. Chen G, et al. Gait Posture. 2005. 


論文の結果は、 

1つ目の片麻痺者と非障害者の歩行の違いは、
麻痺側脚のSwing Initiation障害であり、

2つ目の違いは、麻痺側脚の単脚支持障害でした。


もう少し詳細に述べると、

1つ目の麻痺側脚のSwing Initiation障害は、聞きなれない人も多いと思いますが

Pre-swing時の脚の推進力不足、遊脚時間の割合の増加、麻痺側下肢のtoe-offと遊脚中期での膝屈曲の減少のことです。

そして、その関連した代償戦略として、
骨盤挙上(pelvic hiking)、麻痺側下肢の遊脚期のSwing時の推進力と分回し
が挙げられました。

上記のバイオメカニクスの観点から説明すると以下の通りです。
toe-off時の脚の推進力は、pre-swing時の膝の屈曲と運動学的に関連しているため、
Pre-swing時の下肢推進力低下により、麻痺側脚のtoe-off時の膝屈曲および遊脚中の膝屈曲ピークも減少につながった

麻痺側のPre-swing時およびswing時の体幹の挙上による過度なエネルギーコストの増大は、遊脚時の膝屈曲の減少を補うためのpelvic hikingと一致して、歩行時の力学的エネルギーコストの増大に寄与していた。

2つ目の麻痺側脚の単脚支持障害は、イメージし易いと思いますが、

麻痺肢の支持時間の短縮であり

そして、その関連した代償戦略として
非麻痺肢の遊脚時間を短縮するためにPre-swing時の過剰な推進力
が挙げられました。

上記のバイオメカニクスの観点から説明すると以下の通りです。
麻痺側脚の単脚支持の弱さやバランスの悪さと一致しており、
非麻痺肢のtoe off時の膝屈曲は通常より大きくなる傾向があり、
これはおそらくpre-swing時の下肢の推進力が誇張されているかもしれない。

まとめ

フィジオライオン的まとめは、
  1. 麻痺側脚のSwing Initiation障害
  2. 麻痺側脚の単脚支持障害

2つの一貫した歩行の違いが明らかになりました。

おそらく、上記2点の障害は、
臨床上の経験から脳卒中片麻痺患者の歩行特性として感じていた方も多かったと思います。

しかしながら、
改めてデータとして出されると、臨床での見え方が変わってくると思います。

また、
この特徴をいかに臨床での治療に応用して歩行速度を改善させるか
が理学療法士の腕の見せ所です。


このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。
コメント欄で皆さんの”考え”を共有していただけたら幸いです。


昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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このブログを書いている人

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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