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【論文要約マガジン 第3回】脳卒中患者の95%は発症後11週以内で歩行機能が頭打ちになるって本当?

2025/01/09

脳卒中 歩行 予後予測 論文要約マガジン

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  • 歩行練習しているけど、どこまで良くなるかわからない
  • ここ最近、歩行機能が良くならないけいど、頭打ちなのかな?
  • もしかして、自分の理学療法プログラムがよくないのかな……


私は2013年から急性期病院で理学療法士として働いています
脳卒中患者に対する理学療法も数多く経験しており、臨床ではエビデンスを意識して取り組んでいます。

脳卒中患者の歩行練習を行っていると、
「この人は、どこまで歩行が良くなるのかな?」
「このままのプログラムを続けていいのかな?」と悩みます。
必ずあるタイミングで歩行機能は定常状態、つまり変化しなくなる時期がきますが、その点を意識できていないことが多いです。

そこでこの記事では、『脳卒中患者における歩行機能の回復経過』を観察した研究を解説します。

この記事を読めば、以下のようなことが可能になります。

  • 歩行機能の回復がどのくらいの期間まで見込めるか判断できる
  • 下肢麻痺の程度と最大の歩行機能獲得との関係が理解できる

普段から臨床研究を行っているフィジオライオンが研究論文をわかりやすくまとめました。脳卒中患者の歩行機能の回復に興味がある人は最後まで読んでください。

論文要約

タイトル:Recovery of walking function in stroke patients: the Copenhagen Stroke Study
著者:Jørgensen HS, Nakayama H, Raaschou HO, Olsen TS
雑誌名:Arch Phys Med Rehabil. 1995 Jan;76(1):27-32.
デザイン:前向きコホート研究
Impact Factor:3.97
論文リンクはこちら

タイトルは「脳卒中患者における歩行機能の回復になります。
Copenhagen Stroke Study(コペンハーゲン脳卒中研究)は、脳卒中業界では非常に有名ですよね。今でもよく引用されている論文です。少し古い論文ではありますが、大規模前向き研究は貴重です。

目的:何を検証したか?

脳卒中後の歩行機能の回復経過と初期の下肢麻痺の影響を明らかにすること。

新規性・問題提起:先行研究と比べてどこがすごい?

  • 研究対象が、特定の地域において脳卒中で入院した患者の約90%を網羅した点
  • 入院から自宅や介護施設に退院するまで、あるいは入院中に死亡するまで、週1回の検査で歩行機能の回復を調査した点
地域全体を研究対象として、また週1回の細かい検査でとてもお金と労力がかかっています。

方法

  • 1992年3月1日から1993年9月30日までにコペンハーゲンの病院に入院したすべての脳卒中患者を対象とした。
  • 下肢麻痺は、Scandinavian Stroke scaleスコアを用いて評価した。
【メモ】Scandinavian Stroke scaleによる下肢麻痺の評価
下肢麻痺は以下の5つのカテゴリ
 0:弛緩
 2:重力に反して動くことができない(重度の麻痺)
 4:膝を屈曲させて脚を上げる(中等度の麻痺)
 5:脚をまっすぐに上げるが強度は低下する(軽度の麻痺)
 6:
通常の強さで足を上げる(麻痺なし)
※スコア1と3はSSSには存在しない

  • 歩行機能は、のBarthel indexスコアを使用した。
  • 最大の歩行機能を獲得するまでの時間は、歩行機能がこれ以上改善されない時間として定義された
【メモ】Barthel indexによる歩行機能の評価
歩行機能は以下の3つのカテゴリ
 0または5:歩行困難
 10:介助歩行
 15:自立歩行
代替テキスト

この研究での『最大の歩行機能』はBarthel Indexの歩行が頭打ちになった状態だよ。

結果

  • 入院時に歩行困難の患者では、発症から6週間以内に80%が最大の歩行機能に達し、11週間以内に95%がそれに達した。介助歩行の患者では、80%が3週間以内に最大の機能に達し、95%が5週間以内にそれに達した。
  • 全体で、患者の80%が5週間以内、患者の95%が11週間以内に最大の歩行機能に到達した。
  • 脳卒中生存者のリハビリ終了時の歩行機能は、初期の下肢麻痺と関連していた。


フィジオライオンのつぶやき


以下に臨床で活用可能な結果をまとめてみました。
  • 発症後5週以内」では80%、「発症後11週以内」では95%の脳卒中患者が最大の歩行機能に達した。
  • 入院時に麻痺が軽いほど歩行機能の回復は早く、逆に重度な下肢麻痺がある患者は遅かった。

POINT
  • 歩行機能の最大回復の目安として『発症後11週』が考えれます歩行機能がプラトーになる時期をある程度把握することで治療方針の切り替えに役立つと思います。
  • 今回の論文では、歩行機能をBarthel Indexで評価しており、評価の目が粗いため、細かな変化には対応できていない可能性がある点また、リハビリテーションも進歩してますので、発症11週以上経過しても歩行機能は改善する可能性がある点には十分に注意が必要です


このテーマに興味を持っていただいた方は、
当ページの内容を鵜呑みにせずに1次情報にあたってください。
あくまでもフィジオライオンのフィルターを通しての解釈となっています。

昨日の自分よりも1%成長がモットーのフィジオライオンがお送りしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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急性期病院で理学療法士として働います。昨日の自分よりも1%成長がモットーに臨床と研究に奮闘しています。当ブログは、各患者の最大機能を発揮させる運動療法を追求し、臨床経験や臨床研究を通して誰もが再現性ある手段を獲得できるための情報発信を目的としています。

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